vol.32 初夏の光を透かす、透明な魔法 - 貴婦人たちが愛した涼を呼ぶガラスの歴史と、夏の支度 -
【Salon de lily Column Vol.32】
初夏の光を透かす、透明な魔法
- 貴婦人たちが愛した涼を呼ぶガラスの歴史と、夏の支度 -
風薫る爽やかな季節となりました。初夏の陽射しが木々の緑を透過し、お部屋の中に揺れる影を落とす頃、ふと冷たいお飲み物が恋しくなることはありませんか。皆様、いかがお過ごしでしょうか。
ヨーロッパの宮廷社会では、古くから季節の移ろいに合わせて見事にしつらえを変える文化が根付いていました。重厚な冬のベルベットやタペストリーを外し、軽やかなリネンやレースへと部屋を衣替えするように、食卓の主役もまた、温かみを湛えた磁器から、目にも涼やかなガラス器へとバトンを渡します。夏の離宮へ移り住んだ貴婦人たちにとって、輝く太陽の光を美しく反射するガラスの器は、短い夏を優雅に楽しむための欠かせない小道具でした。
ガラスの歴史を紐解けば、15世紀のヴェネチアに行き着きます。当時、どこまでも透明で不純物のないガラス「クリスタッロ」の製法は、門外不出の極秘技術でした。職人たちは島に隔離され、その透明な芸術品はヨーロッパ中の王侯貴族から熱狂的に求められたのです。やがて時代が進み、美しいエングレーヴィング(彫刻)技術が発達すると、ガラス器はさらに芸術的な高みへと昇華します。氷室から運ばせた貴重な氷を浮かべ、レモネードやシャーベットを透き通る器でいただく。それは、限られた特権階級だけが許された、最高の「涼の嗜み」でした。
現代を生きる私たちにとっても、うだるような暑さが訪れる前に、目から涼を取り入れる準備をしておくのは、とても賢やかで美しい生活の知恵です。お気に入りのグラスに氷がカランと鳴る音。水滴を纏った器の表面に、鮮やかな柄が浮かび上がる瞬間。そんな夏の情景を思い描きながら、今の時期からガラス用の転写紙でポーセリンアートの作品を仕込んでおくのはいかがでしょうか。
透明なキャンバスに絵柄を焼き付けるガラス作品は、飲み物を注ぐことで初めて完成するアートとも言えます。水を入れたときの屈折、光がテーブルに落とす色付きの影。歴史ある名窯の職人たちが追い求めた「光の芸術」を、皆様の掌の上で、ご自身の感性で再現することができるのです。本格的な夏が到来する前に。光と遊ぶための、美しいガラスの準備を始めてみませんか。
今日の「サロンドリリー」のご紹介
【ガラス用】 Limone 転写紙 レモン
